'10/11/16 : 降水量 29 ml ~ 待ち合わせのバリエーション 1/2
携帯電話の充電が切れた。これが自宅での出来事であれば何の問題もないのだが、
あいにくボクは札幌駅のど真ん中に立っていたのである。さらにマズイことにボクは
待ち合わせ場所に向かっている最中で、さらにさらにマズイことに待ち合わせる時間
と場所を正確に決めていなかった。
「着いたら連絡するわ」
という奴である。約束通りちゃんと駅までは到着したのだが、肝心の連絡手段がない。
万事休すかと思われたものの、今回は幸運にも人ごみの中に待ち合わせ相手を見つける
ことが出来た。
この「着いたら連絡する」という待ち合わせ方法、現れたのはここ十年ほどのことだ
ろう。なにしろ携帯電話がなくてはありえない方法である。まさか待ち合わせ場所に
着いてからハガキを出すわけにもいくまい。仮に届け先がそう遠くなかったとしても、
到着まで数日はかかる。数日も待ち合わせ場所に立っていれば、深夜人通りが少なく
なったころに嫌でも目に入るだろう。そもそもハガキが届くのは自宅なので、無事に
会って用事を済ませるか、諦めて帰宅してからでなくては読めない。簡単に言えば
無駄である。
のろし、という手はある。
あるにはあるが、これもやはり現実的ではない。調べてみるとのろしとはワラや
ヨモギを混ぜたものに火をつけるらしい。ならばそれを常に持ち歩いた揚句、待ち合わ
せ場所で火をつけなくてはならない。
たとえば街中で職務質問を受け、鞄の中身を検められたとしよう。そこから出て
くるのはワラとヨモギを練り合わせ、ピンポン玉大に丸められた物体である。
「これはなんですか? 」
「それはのろしです」
ディスイズアのろし。決して日常で使うことはあるまいと思っていた、ディスイズ
アペン構文活躍の瞬間である。しかしどう考えても不審者丸出し。冷や汗が止まらない
状況でしかない。人生最大のピンチといっても差し支えないかもしれない。
(2/2へ続く)