11/01/18 : 降水量 43 ml ~ 1月の読み物 ①ラッシュライフ

 本日は伊坂幸太郎の「ラッシュライフ」のご紹介である。

 毎度毎度のことながら、本を紹介すると言うのは難しい。中身に触れなくては紹介にならないが、

かといって触れすぎるとネタバレになってしまう。今回もネタバレにならないレベルで、かつ本の

面白さを少しでも伝えられれば幸いである。

 他の伊坂作品に違わず、「ラッシュライフ」もミステリーの色が濃い作品である。ただし一般的な

ミステリーとは異なり、本作の中には事件を謎解く刑事も、それに準ずる探偵も登場しない。複数の

登場人物と複数の物語があり、それが絶妙に絡んでいくのだが、当の本人たちにはその全容は見えて

いない。あくまでも事件の全容が見えているのは読者だけなのである。

 そしてもうひとつ、本作にはとある叙述トリックが含まれている。おそらく普通の読者であれば

物語の半分も読めば気がつくかもしれない。ちなみにボクが全体の三分の二ほど読むまで気がつかな

かった、というのは秘密である。死神の精度といい、ラッシュライフといい伊坂幸太郎

叙述トリックを使うのが上手い。ちなみにちなみにボクがどちらの叙述トリックに痺れたかといえば、

それは死神の精度のほうである。とはいえ本作も大変面白かったので、機会があればご一読を

オススメする次第である。

 余談になるが、ボクの中には三人の作家が立っている。日いずる西の方角に立つのが他ならぬ

原田宗典である。もともと幼少の頃から本に囲まれては育ったが、読書にどっぷりとハマったのが

この人のお陰であるのは間違いない。文章を書き始めたのも、この人のような文章を書きたい!

と思ったからで、原田宗典がいなければこの日記も存在し得なかったわけである。長らくボクの

中に一人ででんと立ち続けていた原田宗典であったが、ここ最近になって新たに二人の作家が

現れた。それが北の伊坂幸太郎であり、南の森見登美彦である。この三人がボクの中の三本柱で

あり、文章の根幹を成しているのだが、伊坂幸太郎森見登美彦はまさに対極と言っていい。

伊坂幸太郎の書く文章は無駄が無い。出てくる人物はもちろん、細かな事象が後々に複線となって

生きてくる。

「ああ! あれがこう絡んでくるのか」

 と膝を叩くことも多い。一方の森見登美彦は、語弊のある言い方かもしれないが無駄の多い

作家である。もちろん複線はあるが、本筋とは関係の無い部分の描写が多く行われたりする。

しかしそれこそが森見登美彦の魅力なのだ。それをそぎ落としてしまうと味気ない物語になって

しまう。そんなこんなで一見相容れない作家を交えた三人の書く文章が根幹となって、ボクの

文章は構成されているのである。

 本題と余談がほぼ半々になってしまったが、結局何が言いたかったかというと三人とも面白い

本を書いているから是非読んでね。これだけである。

(ふぁん)