11/02/09 : 降水量 45 ml ~ 2月の読み物 ② 赤朽葉家の伝説
今日も今日とて本のご紹介である。なんだかすっかり本の紹介ブログと化しているが、
他に書くこともあまりないのだから仕方がない。ボクがいかにして平日サボッているかを
書いたところで、怒られることはあっても褒められることはない。印税が入ってくる、と
いうのであればお叱りも甘んじて受けるが、ブログは一銭の利益も生まない。これでは
ボクの丸損である、そんなこんなで本を紹介してお茶を濁している次第である。どうか
ご容赦願いたい。
さて、今日紹介するのは桜庭一樹著「赤朽葉家の伝説」である。「赤朽葉家の伝説」は
千里眼を持つ少女、万葉の生涯を中心にして描かれた家族小説である。舞台は地方都市
鳥取県の中でもさらに地方の小さな町。本来見えるはずもない遠くの出来事、果ては
未来に起こる出来事までを見通す千里眼を持つ万葉は、戦後、高度経済成長期、バブル、
そしてその崩壊から現代まで激動の時代を生き抜いた。万葉の両親、万葉、娘、孫と
世代が移るにつれて変わっていく考え方も良く描かれている。ちなみに本作は万葉を
祖母にもつ孫娘、瞳子の視点で描かれるのだが、彼女はボクらと同世代である。不思議な
力を持つ万葉と、彼女を取り囲む奇妙な人々。死の床についた万葉が最期に瞳子へ残した
衝撃の一言とはなにか。そして瞳子がたどり着いた真実とは。この辺りが見どころ、
もとい読みどころであるように思う。
ところで本作は直木賞候補であった。ボクは自分が知る限り、今まで直木賞受賞作も
候補作も読んだことはなかった。実際に読んでみて一番印象に残ったのは、
「直木賞の選考委員って存外頭やわらかいのね」(←大変失礼)
ということである。「赤朽葉家の伝説」はこりこりに凝り固まった文学作品!という
タイプではない。どちらかというと日本語を崩し気味ですらある。直木賞のような大きな
賞で、こういう作品が候補になるのだなあと感心しきりであった。