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12/05/30 : 降水量 52 ml ~ 岡山滞在紀 1/2

エッセイ

 すでに半年も前のことになるが、ボクは学会に参加するために岡山市を訪れていた。

 半年! 自分で書いて自分で驚いてしまった。つい先日のように思い出せる、あの

岡山滞在から六カ月も経つなんて。六か月と言えば約180日である。180日あれば

二十日大根が九回も収穫できてしまうではないか。そうなれば二十日大根長者だって

夢ではない(夢だっつーの)。

 いつの間にやら二十日大根の話になってしまったが、早い段階で軌道を修正しよう。

今から遡ること半年前、ボクは岡山にいたのである。

 岡山は遠い。とにかく遠い。ボクが岡山を訪れたのは、秋も深まってきた十一月の

ことであったのだが、時期もあまり良くなかったのだ。新千歳空港岡山空港を結ぶ

直行便があるのは、いわゆる観光シーズンだけ。それ以外の季節に札幌から岡山を

目指すと、どこか他の飛行機に乗り換えるか、新幹線などに乗り換えてばならない。

はっきり言って不便である。

 結局、行きは神戸空港から新幹線、帰りは羽田で飛行機を乗り継ぎという予想以上

にハードな移動になってしまった。移動だけで一日がかりである。

 さて、小さなトランクをガラガラと引いて、岡山駅に降り立ったボクを迎えたのは、

明日から参加する学会のでっかいポスターであった。岡山らしく桃太郎が「でーん」

とデザインされている。捻りが無いと言えばその通りだが、数年前に札幌で行われた

ときはそこにクラーク像が鎮座していたのだから、あまり人のことは言えない。

 最早言うまでもないことであるが、ボクの滞在中、岡山はずっと雨模様だった。

ボクがどこかへ出かければ雨が降るのは、コップを逆さにすれば水がこぼれるとか、

食べ物を置いておけば腐るとか、中国が爆発するといったような自然の摂理に近い

ものがある。だから仕方ないのである。ちなみに全四日に渡った岡山滞在の間、

初日と最終日だけはなかなか良い天気であった。ちなみにちなみに初日は着いたら

あとは寝るだけで、最終日は朝一番で発表を終えてあとは札幌に帰るだけ。

「せっかくだから観光してやるもんね」

 などと考えていた中二日は遊びなく雨であった。これもまあ、いつものことである。

 ところで今回の滞在中、ちょっと変わった事態に遭遇した。

 岡山滞在二日目のことである。この日は小雨こそ降ったりやんだりしているものの、

傘さえさせば出歩けないほどではなかった。聞きたかった教育講演まで随分と時間が

あったので、その時間を利用してボクは倉敷を訪れていた。倉敷までは岡山から

普通列車で十八分と非常に近い。倉敷駅の近くには美観地区という古い街並みが

残った観光スポットと、モネの「睡蓮」やエル・グレコの「受胎告知」が展示されて

いる大原美術館がある。まず訪れる機会のなさそうな岡山にせっかく滞在している

のだから、それくらい見なくては札幌に帰れないわ! というわけで、ボクは早起き

して倉敷行普通列車に乗り込んだわけである。

(続く)